「このブログについて」(今更ですが...)
数学に関することで,思ったことや勉強のヒントになりそうなことを書くブログです.私の知識と時間と労力の許す範囲で更新します.
勉強については,数学が得意な人やできる人ではなく,苦手だけどなんとかしたいと思っている人や,何が面白いのかわからない人向けに書くつもりです.
片手間で書いているので,お約束は出来ませんが,数学に関する質問をコメントに残してもらえれば,(私の知識の及ぶ範囲であれば)記事を書くかも知れません.
前にベクトルについて2つ記事を書きましたが,それらは「ベクトルって何????」という人向けに書いたつもりです(「ベクトルって何ですか??」と質問されればあのような記事になる).
ただし,教科書や参考書,その他練習問題問題の解説や解答は返信しません.
質問の内容としては,どのように考えれば良いかとか,何の役に立つのかとか,どこが面白いのかとか,言葉の定義の意味とか.... でお願いします.
噛み合わない議論
議論の噛み合わない人の特徴として
1.必要条件と十分条件を取り違えて(あるいは意図的に入れ替えて)相手の揚げ足をとる
2.仮定を飛ばして結論だけを相手に迫る
の2つが多く見受けられる.
どちらも数学的,あるいは数学でなくとも論理的な思考の訓練の経験のある人ならすぐに間違いと気がつくのに,世の中ではまかり通ってしまうことがある.
1.は最近,あるツイッター上のやり取り(議論)を見て改めて感じた事で,前から気になっていた事.2.は報道機関において,取材対象の発言を都合よく切り取って報道する場合によく見られる事象だと思う.もちろん発言を色々切り取って書き直せばいくらでも相手の印象を操作できる.
インターネットのおかげで,各個人が報道された事柄について事実確認が(ある程度)できる時代になったのは,いいことだと思う.
やっぱり世の中の大きな力に惑わされずに物事を判断するには,論理的な間違いを見抜く力は大事.そのためにも数学を勉強しましょう.
ベクトルの話(続き)
平面上の2つのベクトルの和は,図形的には矢印に矢印を継ぎ足すものとして表される.前の記事で,実数自身も絶対値を大きさ,符号を向きとするベクトルとみなせることを書いた.
http://life-with-mathematics.hatenablog.com/entry/2017/03/28/151524
実数の足し算,例えば 2 + 4 = 6 というのは,数直線上で考えると
「原点から右に2だけ進んだところから,さらに4進みなさい」
という意味である.これを言い換えると
「数直線上で,原点を始点,2を終点とする右向きの矢印(ベクトル!!)に,長さ4の右向きの矢印を継ぎ足しなさい」
という意味である.同様に 4 - 8 = - 4 というのは,4 + (-8) = -4 だから
「数直線上で,原点を始点,4を終点とする右向きの矢印(ベクトル!!)に,長さ8の左向きの矢印を継ぎ足しなさい」
という意味である.
実は,難しく考えなくても,中学校の「正の数と負の数」を学んだときから”数直線上でのベクトルの和や差”を扱ってきているのである.これを”和や差”の性質が保たれるように(この性質は保っていてほしいと思う性質を保つように)平面上や空間のベクトルに拡張したのが”ベクトルの和と差”である.
教科書に載っているようにベクトルの定数倍,和,差を決めると,保っていてほしいと思う性質を保ったまま,数直線上で考えたベクトルの演算(=ふうつの実数の和と差)を平面上や空間上のベクトルに拡張できるのである.このあたりの詳細は,大学で学ぶことになる.
追記:
少し詳しく言うと,保っていてほしい”和や差”の性質というのは
1.x + (y+z) = (x+y) +z
2.x + 0 = 0 + x = x
3.x + (-x) = (-x) + x = 0
4.x + y = y + x
5.a(x +y) = ax = a y
6.(a+b)x = ax = by
7.a ( bx) = (ab) x
8.1 x = x
である.ここで,a,b は実数,x, y,z はベクトル,0 は大きさがゼロのベクトルを表す.
また,ax などは a と x の積を表す.
「亭主関白」(やり直しと丸つけの話)
男:「おい!!飯!!」
男の妻「はい.」
男:「まずい!!作り直せ!!」
妻:「はい.わかりました(💢)」
今時こんな会話の成立する家庭は無いと思うが,学校教育の世界では”やり直し”という名目で成り立っている.
中学生や高校生,あるいは大学生になって,何かの目標(入試,資格試験,定期試験...)のために勉強している場合には,その目標を達成するためにできることを増やさなければならないから,間違えた問題をもう一度見直すこともできるが,これがまだ勉強の目的もアヤフヤな小学生,特に低学年の小学生にとってはとてつもなく苦痛なのではないかと思う.
自分では「出来た」(この場合は全部正解という意味ではなく,やり終えたという意味の”出来た”)と思ってランドセルにしまおうとしたところにお母さんなりお父さんがやってきて,見せてみろと言われ,あそこが違う,ここはこうしたほうがいい,やり直せ,なぜできないんだ.... と言われたらとても勉強を好きになるとは思えなない.
まるで,忙しいなかで家族の健康のことも考えながらメニューを考え,買い物に行き,夕食の準備をしたのに「まずいから作り直せ!!」と言われた気分ではないかと思う.もちろん,作った本人はまずいとも思っていないし,いつも通り作ったのに.....
他の科目は(私はよく分からないから)ともかくとして,算数について言えば,まず宿題の間違いについては,間違えたところをどうするか(やり直しをさせるのか,別の宿題を出すのか)も含めて学校の先生に任せるべきだと思う.
なぜこの記事を書いたかと言うと,最近親に丸つけとやり直しまで任せる小学校があると聞いたいて,それは違うと思ったから.
算数はもちろん,科目(勉強)に関することついては学校の先生(プロ)の仕事のはずなのだから,丸つけもその後の指導も学校の先生の仕事のはずである.
むしろ,家庭に任せるなら,挨拶とか礼儀とかの方だろう.
間違えた問題をやり直させるのが難しいからといって,できないままでも困る.ではどうするかというと,私が小学生を教えていた時には,その子が間違いやすい傾向の問題を別に作って(別の計算ドリルでも問題集からでも良いから写してきて)
「すごい!!こんなに丸がついてる!!よくできたね!! もしまだできそうならこっちもやってみる??」
などとおだててやらせていた.
一つも丸がつかない子は教えたことがないからその場合ままた違うやり方を考えないとね...
「習うより慣れろ」(数学の勉強方法 -続き-)
前の記事で,勉強の方法として教科書の証明を書き写す(できれば考えながら写す)のが良いと書いた
http://life-with-mathematics.hatenablog.com/entry/2017/03/29/132912
が,それは
「習うより慣れろ」
の意味である.多くの人が感じているように,記号はもちろん,数学に出てくる言葉の使い方は日常的な会話のそれとは異なることが多い.したがって,まずは
「”数学” という言葉の作法」
に慣れる必要がある.”定義” や ”定理” といった言葉の意味はもちろん,証明の書き方や細かい言葉遣いに至るまで.
それが一番きちんと書かれているのは教科書である.よほどのことがない限り,書き写すうちに ”数学という言葉” そのものに慣れて,そして自分でも使いこなせるようになるだろう.そうなればしめたものである.あとはそれぞれの目標に応じて,練習問題をこなせば良い.
思い出せば初めて言葉を習うとき,ひらがな,カタカナ,漢字にアルファベットに至るまで,まずはお手本通りに書くことができるように何度も " 書き写す" 練習を行った(やらされた)はずである.
「数学は自然科学の言葉である」というのが正しいのならば(数学を学んだ多くの人がそうであるように,私は正しいと思っている),初めて習う ”数学” という言葉を習得するのにまずやるべきことは「お手本を写して慣れる」こと,次に,「お手本なしで自力で書く練習をすること」のはずである.
数学の場合,後者は練習問題を自分で解いて解答を記述すること,あるいは新しくわかった数学的発見について論文を書くことに該当する.
であるならば,前者の「お手本を写して慣れる」ことはいつやるのだろうか.
先生の板書を写すのもその一つかもしれないが,板書というのは授業の補助であって全てではない.かといって先生が口頭で話したことまで全てノートに書きとるというのはなかなか難しい.であれば,一番身近にあるお手本(=教科書!!)を写すのが一番手っ取り早くできることだろう.
授業では教科書では説明が十分でないと思われる箇所や,重要なポイントを教えてくれるから,教科書の証明を写すことに加えて,その単元に該当する授業のノートをもう一度清書するなどすればさらに理解が深まるだろう.
最終的には,「自分のための数学の教科書」を作るつもりでやると良いと思う.
追記:
同じ理由で,参考書や赤本を解くときも,できない問題は躊躇せずに解答や解説を開いてそれを何度も,わかるまで写すのが良い.そして「分かった!!」と思ったら,2,3日たってから今後は解答や解説を見ずに解くこと(ここでの”解く”は途中の計算や説明も含めて完璧な解答を書くことである)ができるかをやってみる.それができれば,次に同じ類題や,似たような問題でそれを試す.できなければまた解答や解説をわかるまで写す.... を繰り返す.
”できるまで考える” とか ”夢に出るまで考える” とかいうのは(その時間があるならそれでも良いが)差し迫った状況ではあまりにも時間がかかりすぎる.
高校数学の勉強方法
高校の教科書の表紙と裏表紙の裏面には,大抵その教科書で習う公式や定理が載っている.目標を達成するまで(大学入試,定期試験 etc...)に時間があるなら,新しいノートを1冊買ってきて,その公式や定理の証明をそのノートに書く(証明自身は教科書の該当する単元のページに書かれている).もちろんただ書くだけではなくて,書きながら考える(定理の仮定はどのように使われているのか,なぜこのような式変形をするとうまくいくのか....)
難しいと思うなら,教科書に書かれている証明を丸々写すだけでも良い.
その作業と同時進行で,練習問題や章末問題をやると良い.
入試が近くなったら,そうやって勉強した中で自分が苦手と思う単元やとっつきにくいと思った形式の問題を,(解説がしっかり載っている)参考書を使って繰り返し解く.
以上
追記(2017.4.9)この方法は大学の数学でも同じである.大学の数学の場合には,各講義において指定された教科書の内容をノートに写しながら,講義の内容を加筆して”自分だけの”教科書をつくると良い.専門性が高い科目だと教科書が指定されていない場合もあるが,それでもとにかく講義ノートをもう一度(別のノートに)自分なりにまとめ直す作業をするだけでも良いと思う.
証明問題の解き方
STEP0 図形に関する証明の場合は図を描く.
STEP1 問題文の中の仮定を書き出す.
STEP2 証明したいことを書き出す.
STEP3 証明したいことのためには,何がわかれば良いかを遡って書く.同時に図形に関する証明の場合は,わかったことをどんどん図に描き入れる(この作業を続けてすべての仮定にたどり着けば証明完了.STEP5 へ.たどり着かない仮定(使っていない仮定)があるなら STEP4へ).
STEP4 使っていない仮定があるから,その仮定から証明に必要な事実が導かれるかを考える
STEP5 仮定から結論に向かって証明を清書する
例:四角形ABCDにおいて,角Bと角Dの大きさが等しく,かつ対角線 AC が角Aを二等分するとする.このとき三角形 ABC と三角形 ADC は合同であることを証明せよ
考え方:
STEP0 図を描く(描いてみてね!!)
STEP1 仮定は3つ:
「角B = 角C」
「ACは共通の辺」
「角 BAC = 角 DAC 」(角A が二等分されているから)
STEP2 証明したいことは三角形 ABC と 三角形 ADC の合同
STEP3
→合同条件がわかれば良いから
「3つの辺がそれぞれ等しい」
か
「2辺とその間の角がそれぞれ等しい」
か
「1辺とその両端の角がそれぞれ等しい」
のどれかを示したい.
→2つの三角形について「AC = AC」はわかっているから残るは
「AB=AD かつ BC = DC」(3つの辺がそれぞれ等しい)
か
「角 BAC = 角 DAC かつ 角ACB = ACD」(1辺とその両端の角がそれぞれ等しい)
か
「角 BAC = 角 DAC かつ AB = AD」(2辺とその間の角がそれぞれ等しい)
か
「角ACB = 角ACD かつ BC = DC」(2辺とその間の角がそれぞれ等しい)
→仮定を見ると 「角 BAC = 角 DAC 」はわかっている!!だから
(「AD = AD」と「角 BAC = 角 DAC 」はもうわかっているから)
「角ACB = 角ACD」(1辺とその両端の角がそれぞれ等しい)
か
「 AB = AD」(2辺とその間の角がそれぞれ等しい)
がわかれば良い.
STEP4 あと使っていない仮定は「角B = 角D」だけだから,これを使えそうなのは...
”「角ACB = 角 ACD」(1辺とその両端の角がそれぞれ等しい)” かな??
→(図を描いて考えると...!!)
「どんな三角形の内角の和も180度である」を使って
角 ACB = 180 - 角 B - 角 BAC
= 180 - 角 D - 角 DAC
= 角 ACD !!
STEP5
証明
三角形 ABC と 三角形 ADCについて,
仮定より,「角B = 角D」と
「角 BAC = 角 DAC 」・・・・・・・・・・ ①
が成り立つ.三角形の内角の和は180度であるから
角 ACB = 180 - 角 B - 角 BAC
= 180 - 角 D - 角 DAC
= 角 ACD ・・・・・・・・・・ ②
が成り立つ.
また,仮定より,
ACは共通の辺 ・・・ ③
である.
よって,①,②,③より,1辺とその両端の角がそれぞれ等しいから三角形 ABC と 三角形 ADCは合同である.(証明終わり)
慣れてくるとSTEP3を全部頭の中でできるようになる.それまでひたすら練習あるのみ!!