ベクトルの話(続き)
平面上の2つのベクトルの和は,図形的には矢印に矢印を継ぎ足すものとして表される.前の記事で,実数自身も絶対値を大きさ,符号を向きとするベクトルとみなせることを書いた.
http://life-with-mathematics.hatenablog.com/entry/2017/03/28/151524
実数の足し算,例えば 2 + 4 = 6 というのは,数直線上で考えると
「原点から右に2だけ進んだところから,さらに4進みなさい」
という意味である.これを言い換えると
「数直線上で,原点を始点,2を終点とする右向きの矢印(ベクトル!!)に,長さ4の右向きの矢印を継ぎ足しなさい」
という意味である.同様に 4 - 8 = - 4 というのは,4 + (-8) = -4 だから
「数直線上で,原点を始点,4を終点とする右向きの矢印(ベクトル!!)に,長さ8の左向きの矢印を継ぎ足しなさい」
という意味である.
実は,難しく考えなくても,中学校の「正の数と負の数」を学んだときから”数直線上でのベクトルの和や差”を扱ってきているのである.これを”和や差”の性質が保たれるように(この性質は保っていてほしいと思う性質を保つように)平面上や空間のベクトルに拡張したのが”ベクトルの和と差”である.
教科書に載っているようにベクトルの定数倍,和,差を決めると,保っていてほしいと思う性質を保ったまま,数直線上で考えたベクトルの演算(=ふうつの実数の和と差)を平面上や空間上のベクトルに拡張できるのである.このあたりの詳細は,大学で学ぶことになる.
追記:
少し詳しく言うと,保っていてほしい”和や差”の性質というのは
1.x + (y+z) = (x+y) +z
2.x + 0 = 0 + x = x
3.x + (-x) = (-x) + x = 0
4.x + y = y + x
5.a(x +y) = ax = a y
6.(a+b)x = ax = by
7.a ( bx) = (ab) x
8.1 x = x
である.ここで,a,b は実数,x, y,z はベクトル,0 は大きさがゼロのベクトルを表す.
また,ax などは a と x の積を表す.