「わかるとはどういうことか」(割り算の話)
「分かる」ということは,人によっても異なるだろうし,同じ人でも問題によって異なることがある.
私が院生の頃,ゼミで商空間の話を聞く機会があった.それまではよくわかっていなかったのだけれど,その時の発表を聞いて「わかった」という感覚を得た.その時の話を大まかに説明しようと思う.
まず,割り算の意味について幾つか考えてみる;
1.分割
(例1):6つのりんごを3人で分けるとき,いくつずつ分けることになるか.
6÷3=2 答え:2個ずつ
2.比(一つあたりの量)
(例1)の計算に単位をつけて
6(個)÷3(人) = 2(個/人) 答え:一人当たり2個ずつ
3.同一視
(例2) 果物が全部で6こあります.この中にみかんとりんごが同じ数含まれています.みかんとりんごをそれぞれ別々の袋に分けて入れたとき,袋はいくつ必要でしょうか.
6÷3=2 答え:2袋
つまり,”個数”ではなく,同じ性質を持つもの(今の場合はみかんはみかん,りんごはりんごとしての性質を持つ)はまとめて1つとみなして(同一視して)数えるという意味である.
商空間の場合には3つ目の同一視という意味をもって”空間”をある規則で同一視したものとして定義されるという説明だった.割り算の意味について,”分割”,”一つあたりの量”に加えて”同一視”の意味を知っていると商空間の意味を理解することはそれほど難しいことではない.